CVCとは?コーポレート・ベンチャー・キャピタルのメリット・デメリットを事例で詳しく解説

2024.05.01

SB Insights

CVCとは?コーポレート・ベンチャー・キャピタルのメリット・デメリットを事例で詳しく解説

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CVC とは?

近年、オープンイノベーションや事業の多角化が重要視される中、CVC:コーポレート・ベンチャー・キャピタルとは、企業の成長戦略において重要な役割を担っています。

本記事では、CVCの概要、メリット、デメリット、そして具体的な事例について詳しく解説します。

1. CVCとは何か?

CVCとは、Corporate Venture Capitalの略称で、事業会社が自社の資金でベンチャー企業に出資を行う活動、またはその組織を指します。

投資家から資金を集めてファンドを組成するベンチャーキャピタル(VC)と異なり、CVCは投資利益の最大化よりも、自社の事業とのシナジー効果創出やオープンイノベーションの推進、新規事業の創出などを目的としています。

近年、多くの企業がCVCを設立しており、日本国内でもその数は増加傾向にあります。

CVCの概念については、こちらで詳細を解説しています。

2. CVCのメリット

CVCには、以下のようなメリットがあります。
1) 新規事業の創出とリスク分散
M&Aと異なり、CVCは経営権を取得せずに投資を行うため、相対的に投資に必要な資金を少額で抑えられる傾向にあり、多額の資金を投資できない研究段階の技術力を高めていきたい場合や、自社単独での立上が困難と想定される新規事業に対して、スタートアップと連携することで、自社のリスクを減らしながら参入することができます。また、スタートアップの革新的な技術やアイデアを取り入れることで、従来では考えられなかったような新規事業を創出することが可能になります。

2) オープンイノベーションの推進
CVCを通じてスタートアップと連携することで、自社だけでは得られない技術やノウハウを獲得することができます。また、スタートアップとの交流を通じて、社内の風通しが良く なり、新しいアイデアが生まれやすくなるという効果もあります。

3) 事業シナジーの創出
自社の事業と関連するスタートアップに出資することで、新たな技術・ノウハウや顧客基盤の獲得や、既存事業の効率化・収益化につなげることができます。

4) 企業の競争力強化
CVC活動を通じて、常に新しい技術やトレンドを取り入れることで、企業の競争力強化に貢献することができます。また、スタートアップが成長をしたときに、自社の事業に対して脅威になるような技術力やビジネスモデルのスタートアップに対して、早期に出資をしておくことで、将来的に競合他社に買収されるなどの抑止力となり、間接的な競争力強化にも繋がります。

5) M&A候補の獲得
将来的なM&A候補となるベンチャー企業を発掘し、少数株主として、情報開示を受けながらスタートアップをモニタリングしつつ、投資先がM&Aを検討する際は早期に検討を開始することで、他社よりも優位に検討することができます。

3. CVCのデメリット

CVCには、以下のようなデメリットもあります。
1) 投資先の選定リスク
スタートアップへの投資には、事業が失敗し、減損などの損失を出す可能性があります。そのため、投資先の選定を慎重に行うことが重要です。

2) スタートアップに対する理解
スタートアップの経営を支援するには、スタートアップ特有の経営ノウハウが必要となります。大企業の常識とスタートアップでは、スピード感や経営に対する考え方が違うため、大企業やCVC担当者はスタートアップに関する知識や経験を身につけて、理解を深めていくことが重要です。

3) 社内稟議の煩雑さ
投資決定までにスピード感が求められるスタートアップへの出資においてCVCは、社内稟議を経なければ承認されないケースが多く、それが意思決定の迅速性を妨げる可能性があり、結果として投資ができないこともあるため、社内理解が重要です。

東証上場企業100社に聞いたCVCについての課題もまとめています。

4. CVCの事例

近年、CVCを活用した成功事例が多数生まれています。以下、その一例を紹介します。

1)バンドー化学株式会社
直近の日本企業のCVCにおける、成功例の1つであるバンドー化学株式会社。同社では、自動車部品メーカーとして培ってきた「コア技術」を応用したオープンイノベーションを模索していく中で、「ロボット」領域の市場を中期的な新市場と位置付け、自動野菜収穫ロボット開発を手掛けるスタートアップ企業への出資を行い、新市進出への足掛かりとしている。

参考:オープンマインドが生み出した、事業会社とスタートアップとの連携とは。

オープンマインドが生み出した、事業会社とスタートアップとの連携とは。 |

中長期経営計画の指針の1つとして『「共創」を軸に新規事業の進化とコア事業の深化を加速』を掲げているバンドー化学株式会社(以下、バンドー化学)は、AIを活用した農業自動収穫ロボットを中心に生産者向けサービスを提供するinaho株式会社(以下、inaho)へ出資を行いました。

2) 前澤化成工業株式会社
前澤化成工業株式会社は、中期経営計画の中で、「機動的成長投資活動として、CVC活動を通じたスタートアップ投資を機動的に実施し、成長事業・新規事業創出に繋がる成長投資」をESG投資も併せて、最大35億円行うとしている。直近の公表事例としては、傘のシェアリングサービス「アイカサ」を運営するスタートアップ企業に投資を行った。同社のプラスチックの射出成型で培われた技術力を、スタートアップ企業が作成を行う傘などの製品改良に活かしていくことが狙いだ。

参考:「新進気鋭のスタートアップ」と「水インフラを支える上場企業」の幸福な出会いから考える。理想的なアライアンスとは?

「新進気鋭のスタートアップ」と「水インフラを支える上場企業」の幸福な出会いから考える。理想的なアライアンスとは?

傘のシェアリングサービス「アイカサ」を展開する​​​​株式会社Nature Innovation Groupは、前澤化成工業株式会社からシリーズAエクステンションラウンドの資金調達を実施し、資本業務提携契約を締結したと発表。気鋭のスタートアップと、水インフラの分野では知る人ぞ知る老舗メーカーが、どうして手を組んだのか。

3) 伯東株式会社
エレクトロニクス商社とケミカルメーカーの複合企業として知られる伯東は、新たな技術を探索する上で、「革新的な技術であるか」、「事業との親和性があるか」、「Win-Win-Winの関係になれるか」という3つの観点から検討を行う。そんな伯東は新たな技術力を探求する手段として活用するのが、CVC投資になる。直近の公表されている事例としては、ペロブスカイト太陽電池を開発するスタートアップ企業に投資を行った。技術商社としての、アセットを活かした開発の支援と、量産化された際のグローバルの販路を活かした営業支援という技術商社ならではのスタートアップとのオープンイノベーションの形を目指す。

参考:次世代の太陽光技術を社会へ実装したい!「技術商社」と「京都大学発のスタートアップ」を結び付けた熱意と理解

次世代の太陽光技術を社会へ実装したい!「技術商社」と「京都大学発のスタートアップ」を結び付けた熱意と理解

曲がる太陽電池「ペロブスカイト型太陽電池」を開発するエネコートテクノロジーズは2024年7月18日、第三者割当増資で55億円を調達したと発表した。これまでに得た資金は公的助成も合わせると100億円を超えた。本格的な生産体制の確立を急ぐとともに、車載用などへの展開を見据えて年内にも小型の太陽電池を発売する。

5. まとめ

CVCは、企業の成長戦略において重要な役割を果たすことができます。しかし、CVC活動にはメリットだけでなくデメリットもあるため、自社の状況に合わせて慎重に検討することが重要です。
また、CVCを活用することで、企業は新規事業の創出、オープンイノベーションの推進、事業シナジーの創出、企業の競争力強化などを実現することができます。
今回の事例では、日本を代表する企業のCVC事例を取り上げましたが、業界や企業規模に関わらず様々な企業がCVC活動をはじめています。

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