大企業とスタートアップの共創による新規事業開発フレームワーク

2024.10.23

SB Insights

大企業とスタートアップの共創による新規事業開発フレームワーク

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市場は変化し続け、競争も激化している現代において、上場企業が成長し続けるためには、既存事業だけでなく新規事業開発が非常に重要になってきます。そのような状況下で、新規事業開発に苦戦をする企業は後を絶ちません。自社内では、新規事業開発が出来る人材や制度がなかったり、M&Aでは自社とのシナジー効果が見込める周辺領域がターゲットとなり、新規事業は獲得できない。そんな中で、注目をされ始めているのが、スタートアップ・ベンチャーを共創パートナーとする新規事業開発です。上場企業とスタートアップ・ベンチャーは補完関係にあり、利害が一致することも多く、共創事例は増加基調となっています。
本コラムでは、上場企業とスタートアップ・ベンチャー企業の共創・協業による新規事業開発の進め方について、詳しく解説をしていきます。

なぜスタートアップとの新規事業開発なのか?

上場企業とスタートアップは、補完関係が成立しやすく、自社単独では実現が難しい新規事業開発の再現性を高めることが可能になります。どのような補完関係があるのかを整理します。

1. 新規事業開発を実現する上で、上場企業が課題とするポイントと補完関係

課題スタートアップが補う部分
アイディアがない柔軟な発想でビジネスを展開するスタートアップと組むことで、新たな発想や視点から新規事業に対する気付きを狙う。
実行に移すまでに、時間が掛かるスタートアップの強みであると意思決定の速さを活かして、自社内では実行移すまでに時間の掛かる事業検証をスタートアップで行う(出島的な役割を担ってもらう)、
新規事業開発の牽引役がいないスタートアップの起業家は、新分野に挑戦をするために、起業をしているので、推進力が高い人物が多く、起業家を巻き込むことで、新規事業開発における推進役を担当してもらえる。
社内だけでは、経営陣を説得できない新規事業開発を行う上で、自社にとって未知の領域に対して、その領域に知見のあるスタートアップの起業家から経営陣に説明をしてもらうことで、経営陣の納得感があがり、プロジェクトが承認されやすくなります。

共創の意義と目的設定

  • 目的の明確化
    大企業は新しい市場参入や既存事業の拡張、スタートアップはスケールや資源の確保が目的となることが多いです。まずは、しっかりとお互いの目的を初期段階で明確にします。
  • ビジョンの共有
    双方のビジョンを一致させ、協働に向けた共通の方向性を設定します。

新規事業開発をする上での主なフレームワーク

ステージ主なアクション成果物・確認事項
① リサーチ&戦略立案市場調査、技術評価、ビジネスモデルの検証、大企業・スタートアップの強みの分析新規事業の方向性、目標設定、仮説の立案
② 事業計画の策定プロトタイプの設計、ビジネスモデルキャンバス、資金計画の構築MVP(最小限の実用的製品)、リソース・リスクの明確化
③ 実行フェーズプロトタイプの開発、テストマーケティング、アジャイル開発手法の導入製品テスト結果、ユーザーフィードバック
④ スケーリング&市場投入スケール戦略の策定、営業・マーケティングの強化、リソースの最適化市場投入計画、顧客獲得計画、成長戦略の実行
⑤ 継続的改善データ分析、ユーザーインサイトの活用、定期的なピボットまたは調整新規機能の追加、UX向上、事業戦略の微調整

新規事業開発におけるステップ

1. アイデア創出

  • 市場調査
    トレンドや顧客ニーズを把握し、ギャップを特定します。
  • 社内外からのアイデア収集
    大企業の既存資源やスタートアップの革新的技術を活用。

2. 検証とビジネスモデルの構築

  • 仮説検証
    スモールテストを繰り返し、事業仮説を検証します。
  • ビジネスモデルキャンバス
    顧客セグメント、バリュープロポジション、チャネル、収益源等を明確に。

3. MVP(最小限の実用的製品)開発

  • プロトタイプ作成
    素早く製品のプロトタイプを作成し、ユーザーフィードバックを集めます。
  • パイロットテスト
    小規模でテストマーケティングを行い、実用性を確認。

4. 市場投入とスケール

  • 市場戦略の策定
    どの市場に投入するか、どのように拡大するかを計画します。
  • パートナーシップの強化
    大企業のブランドやリソース、スタートアップのスピードを最大限に活用。

5. フィードバックと改善

  • データ収集と分析
    顧客のフィードバックや市場の反応を迅速に収集・分析し、改善策を講じます。
  • 継続的なピボット
    必要に応じて戦略を調整し、成功へ導きます。

失敗しやすいポイント

1. 目的・ビジョンの不一致

大企業とスタートアップの目標が異なると、共創がうまく進まないことが多いです。最初にビジョンや目的を明確に共有しないと、方向性がズレ、失敗に繋がります。

2. スピードと文化の違い

  • スタートアップは素早い意思決定やリスクテイクを重視する一方、大企業は慎重なプロセスを踏むことが多いため、文化的な違いが障害となることがあります。

3. 資源の最適活用の失敗

  • 大企業の持つ資源(人材、資金、マーケティング力)を効果的に活用できないケースや、スタートアップの柔軟性やスピードが活かせない場合があります。

4. コミュニケーション不足

  • 双方の連携が不足すると、意見の衝突や誤解が生じ、プロジェクトが停滞します。定期的なミーティングや進捗確認が不可欠です。

5. MVPの過剰開発

  • MVPの段階で完璧を目指し過ぎると、開発に時間がかかりすぎたり、顧客の本質的なニーズを見失うリスクがあります。まずはシンプルな製品を早く市場に投入し、学習を繰り返すことが重要です。

成功に導くためのポイント

  • 初期段階からの明確な合意: 共通のゴールと期待値をセット。
  • 迅速なプロトタイピング: 早期に顧客からのフィードバックを得る。
  • スピードと柔軟性の両立: 大企業の資源とスタートアップのスピードを効果的に融合。
  • 文化の橋渡し役を配置: 双方の文化的ギャップを埋める役割が重要。
  • 継続的なコミュニケーション: 進捗や問題を共有し、常に開かれた対話を維持する。

このフレームワークを元に、大企業とスタートアップが効果的に協力し、イノベーションを促進する新規事業を成功へ導くことが期待されます。
次回のコラムでは、実際の支援事例を交えて、新規事業が立ち上がるまでの裏側を徹底解説していきます。フレームワークについて、もっと詳しく知りたい方は、こちらも参照ください。

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