東証上場企業100社に聞いた。中期経営計画で掲げた「オープンイノベーション推進/新規事業開発」の現在地と課題感まとめ

2024.05.08

SB Insights

東証上場企業100社に聞いた。中期経営計画で掲げた「オープンイノベーション推進/新規事業開発」の現在地と課題感まとめ

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東証上場企業の中期経営計画の開示割合は、3,771社中1,945社で51.5%。上場区分では、東証プライムが70.2%、東証スタンダードが36.2%、東証グロースが26.1%とのデータがあります。
中期経営計画の作成、開示ともに義務ではないですが、プライム上場企業を中心に中期経営計画を作成し、開示する企業は毎年増加傾向にあります。

企業数中計開示企業数割合
プライム1,8391,292約70%
スタンダード1,466531約36%
グロース466122約26%
出所:東証のデータをもとに弊社独自に作成

中期経営計画の中で、更なる非連続の成長を実現するためのキーワードとして「オープンイノベーションの推進」や「新領域/新規事業の創出」を掲げる事業会社が増加傾向にあります。
一方で、掲げた中期経営計画に対する各社のアクションの状況は、具体的に実行に移して、成果を出している事業会社や、絵に描いた餅となってしまい具体的にはなにもアクション出来ていないなど事業会社ごとに差が大きい。
今回はそんなオープンイノベーションの推進や新規事業の創出に向けた各社の取り組みや、共通点の多かった課題感などを一挙に紹介していく。

オープンイノベーションとは?

オープンイノベーションとは、企業内と企業外の技術やアイデアを組み合わせることにより、革新的な価値を創り出すイノベーション手段のことで、2003年に、ハーバード大学経営大学院の教授であったヘンリー・チェスブロウによって提唱された概念です。
主に「製品開発」「技術改革」「研究開発」「組織改革」などにおいて、社内の資源に頼るばかりではなく、社外との連携を積極的に取り入れるべきであるとの考えが示されています。
一方、オープンイノベーションの対義語としては「クローズドイノベーション」があり、自社の研究機関など組織内のみで完結し、新たなイノベーションを創出させることを意味します。日本ではよく「自前主義」と表現されます。

昨今では、資金や社内アセットなどが豊富な大企業と、特定の領域に強みのある人材が集まっているスタートアップと連携をすることで、技術力の発展や最終的な社会実装を狙う事例が増加傾向にあります。

中期経営計画において、オープンイノベーションや新規事業創出を掲げているか

弊社にて2023年10月~2024年3月(6ヶ月間)までの期間に面談をした東証上場企業のうち中期経営計画を開示している100社に対して、ヒアリングを行った結果を基に分析をした。

中期経営計画に対するヒアリング項目100社中の該当企業数
オープンイノベーションの促進を掲げている39社
上記実現に向けて具体的かつ継続的アクションを行っている18社
新規事業の創出を掲げている81社
上記実現に向けて具体的かつ継続的アクションを行っている45社

中期経営計画を開示している企業のうち、約3割の事業会社がオープンイノベーションの促進について触れているが、一方で、オープンイノベーションの実現に向けて自社で具体的かつ継続的にアクションを起こせている事業会社は半数以下の18社に留まった。
新規事業の創出については、濃淡こそあるものの約8割の事業会社が将来的な目標として掲げており、半数以上の事業会社は新規事業の創出に向けて具体的なアクションを継続している。

オープンイノベーションの実現に向けた具体的な取り組み

具体的なアクションを行ったことがある事業会社に、実際に過去に行った取り組みをヒアリングした。

イベントへの参加

オープンイノベーションの実現の手段の1つとして、スタートアップとの連携を視野に入れている事業会社は多く、スタートアップに関する情報収集や、出会いを創出する目的で、スタートアップが集まるイベントに参加をする事業会社の割合は多い。
イベントへの参加は、費用などは掛からずに情報収集やスタートアップと出会うことが出来るメリットがある一方で、イベントに参加すること自体や、参加したイベントでの出会いを最大化させるためには、積極的な名刺交換を行う必要があり、工数が掛かかること、カジュアルに複数の企業と出会える反面、具体的な商談などに繋がりずらいなどのデメリットもある。
そのため、専門部署などがない経営企画室が兼業として、オープンイノベーションを検討する際は、イベントへの参加は、負担が大きいわりに成果が出にくいという評価が多い。

アクセラレータプログラムの開催

アクセラレータープログラムとは、事業会社や自治体が主催者となりスタートアップとの協業や出資を目的として開催されるプログラムです。
事業会社はスピーディーな新規事業の立ち上げ、スタートアップは早期の成長機会となり、双方のビジネスの成長速度を加速することが可能となります。
メリットとしては、スタートアップが自社との協業プランなどを考案してくれた上で、主催者側である事業会社がプログラムの過程で選考をしていくことで、協業のイメージがわきやすいなどが挙げられます。
デメリットとしては、開催に際して一定のコストが掛かる。プログラムを開催して集客をするため、集客が自社の知名度やブランド力に比例する。応募のあったスタートアップの中から選考を進めるため、自社の実現したい協業案が出てこないなどが挙げられます。

そのため、アクセラレータープログラムを継続するかどうか、1度実施をしてみた結果に左右されるケースが多く、1度開催をして狙った効果を得られなかった事業会社は、別の方法を模索するケースが多い。

コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の運営

事業会社が協業などを目的として、スタートアップに対して出資をしていく活動全般をCVCといい、近年ではCVC活動を開始する会社が増えております。
CVCはファンド化する場合と、自社のBSから直接投資をする場合など、形態としてはいくつかパターンがあるが、総じて、スタートアップに対する出資や協業に積極的であるという対外的なPR要素も強いことから、イベントへの参加やプログラムを開催せずとも案件の流入などが増えることなども期待出来るなどのメリットがある。
デメリットとしては、ファンド化(二人組合形式)する場合は数十億単位の資金が必要でありハードルが高いことや、CVCの運営実務に関しては専門性が高いことからも専門の人材の採用もしくは、運営に長けた外部機関への委託の必要がある。

そのため、CVCの活動を行っていきたいと思っているが、ファンド化するほど、社内の方向性が定まっておらず検討が進まないケースや、自社のみの直接投資でスモールスタートをしようとしても社内にベンチャー投資の実務に長けた人材が採用できず、実行に移せない事業会社が多い。

新規事業創出に向けた具体的な取り組み

具体的なアクションを行ったことがある事業会社に、実際に過去に行った取り組みをヒアリングした。

コンサルティングファームへ発注

新規事業創出を検討していく上で、具体的な取り組みとして多かったのは、戦略コンサルティングファームなどへの外注を行うことで、自社の技術・アセットの整理や、自社が進出すべき領域の整理と、市場分析などを依頼するケースが最多となった。
コンサルティングファームに新規事業創出を依頼した場合のメリットとして、声が多かったのは、関心のある領域などに対する市場動向などを把握出来るや、自社の技術力やアセットをレポート化して整理してもらうことで、社内の方向性を定めやすいなどが多く挙げられた。
デメリットとしては、費用が高額になってしまう。自社の方向性が定まったあとに、実行に移す際に、社内に適任者がいないなどが挙げられます。

コンサルティングファームに依頼をした事業会社の経営企画室担当者からの声としては、実行支援まで伴走してくれるパートナーが欲しいが多い。

M&Aの検討

コンサルティングファームへの依頼と同じく、取り組みとして多かったのは、自社にとって親和性の高い新規事業領域を行う企業の買収の検討でした。
案件は銀行や証券会社からの紹介を待つケースや、自社で自ら案件を開拓するなど方法は様々です。
M&Aのメリットとしては、買収する企業の経営権を取得できるため、新領域への進出の足掛かりとしては有効性が高いことが挙げられます。
デメリットとしては、買収資金が高額になりやすい。売却を検討している会社の探索や、買収に掛かる交渉が長期化しやすく、M&Aの検討をしても狙い通りの企業を買収できる可能性が高くないことが挙げられます。

具体的なアクションを起こす上での課題感

面談を通じてヒアリングを行った事業会社100社の中で、共通の課題感として重複が多かったのは以下の通り。

課題具体的な課題
1位専門人材が不足・ベンチャー投資ができる人材の不足
・事業開発を推進する人材の不足
・他業務と兼業で時間を割けない
2位新規事業創出への仕組みや風土・新規事業創出のための専門組織がない
・提案・評価制度を構築し、PDCAを回せない
・失敗を恐れる社風
3位企業間の相乗効果創出・投資したスタートアップと協業できない
・外部との連携に社内の協力が得られない
・社内に新しいアイディアがない

中期経営計画にオープンイノベーションや新規事業の創出を掲げているかの有無に関わらず、上場企業の経営企画室担当者が、新規事業などに取り組もうと考えた際の課題としては、「人材不足」が最も多かった。
次いで多かったのは、社内に新規事業創出(ベンチャーとの協業含む)のための専門組織がなく、兼業で行っているため、具体的なアクションが起こせていない。新規事業創出までのプロセスを評価する制度がないため、失敗を恐れてしまいチャレンジする人が出てこない。
最後は、実際にスタートアップと接点を持ったり、投資を実行した後に、うまく連携(協業)出来ないという課題が挙げられた。うまく連携が出来ない要因としては、社内の協力が得られないや、事業検証に必要な予算が確保出来ないなどの事業会社内に起因する要因が多かった。

事業会社ごとに様々な課題を抱えているが、共通しているのは人材不足と社内風土が大きな影響を与えいるケースが多かった。
人材不足や社内風土の変革に対する解決策としては、ベンチャー投資や事業開発に長けた外部の専門企業と伴走しながらプロジェクトを進めていくのが、最適解と言える。

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