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出演者

小澤 壮太

ソーシング・ブラザーズ株式会社 代表取締役

春日 博文

ポート株式会社 代表取締役社長CEO

概要

2011年、学生起業から始まったポート株式会社は、いま売上高800億円を掲げている。
中期経営計画「ODYSSEY800」は5年でCAGR30%、売上高を4倍にするという壮大な旅(オデッセイ)

達成するための成長戦略として掲げるのがM&Aである。既存事業の成長を確実なものにするために、ポート株式会社には独自のM&A哲学がある。
100%の買収にこだわらず、段階的に比率を上げる。
「売り主さん次第」を原則に、買収後も経営陣を送り込むのではなく現場から人材を育てる。
そして、業績を足し算するだけのM&Aは行わない。

数十件におよぶM&Aの実践から見えてきた「売り主さん次第」の哲学、失敗との向き合い方、そしてインオーガニックグロースが日本社会にもたらす好循環まで。ポート株式会社 代表取締役社長CEO 春日博文氏にソーシング・ブラザーズ 小澤壮太が聞いた。

対談を読む

Chapter 01

800億円への野望 ― 中期経営計画「ODYSSEY800」

小澤
春日さんといえば去年に2次の中計を1年前倒しでほぼ達成されていて、去年3次の中計で中期経営計画「ODYSSEY800」を発表されてると思います。
まず、「ODYSSEY800」の名前の由来を教えてください。
春日
ODYSSEY=冒険なので、壮大な旅であり、チャレンジであるという意味を込めています。
ポートとしても5年間とういうのは長い期間です。そういった壮大な長い旅を「800億」という目標に向かって走っていくっていう、そういった意気込みも兼ねたネーミングですね。
小澤
去年この「ODYSSEY800」を見た時に結構高い目標だなっていうふうに思ったのですが、実際チャレンジングな目標にはなってますよね。
春日
そうですね。
200億ぐらいの売り上げから800億を目指すこの計画は、5年間で売り上げ4倍を目指します。
5年間の成長率を年率30パーずつ伸ばしていくことを前提にしないと達成できない計画なので、年々企業業績が大きくなると成長率を維持するのって大変だと思うんですけども。
それを維持できるようにしようというところが、我々にとって壮大なチャレンジであり冒険です。
小澤
今のこの中期経営計画達成するにあたって、HRの事業もエネルギーの事業も、それぞれかなり伸びてらっしゃるじゃないですか。この中計は既存の事業だけで達成するっていう見込みなんですか。
春日
まず前提として、今エネルギーのビジネスと人材の事業は、それぞれ特定の領域では市場シェアナンバーワンになっており、それなりにいい形になってきたなと思ってます。
前提としてこれらの既存事業はどんどん拡大していき、圧倒的なナンバーワンを目指していきます。
ただ、それだけでは2030年度、そしてそれ以降の成長を確実なものにできないです。
そんな中で、次の柱を作るという意味でM&Aを成長戦略の一つに掲げています。

Chapter 02

「売り主さん次第」というM&A哲学 ― 規律と、聖域なき決断

小澤
春日さんの会社は100パーセントの買収にこだわらないといいますか、比率でいうと数パーセントや50パーセント前後から始めて、段階的に比率を上げていくっていうような手法も取られてらっしゃると思うのですが、今ポートが掲げてらっしゃるM&Aの戦略をお伺いしてもいいですか。
春日
簡単に申し上げると、総じて売り主さん次第だと思うんですよね。
というのも、われわれがそうしたいって言ったとしても売り主さんがそうしたくなかった場合は結局成立しないものなので、我々としては現時点では再生案件として赤字の事業などを買収してるわけじゃなく、どちらかというと成長してる会社を買収して、一緒により成長していくっていうストーリーなので基本的にいい会社だし、今売る理由なかったりもする。そういった意味ではM&Aで重要なのは、いろんな売り主さんに対する我々の対応力を広げていくということも重要なんじゃないかなと思ってやってますね。
小澤
春日さんの中で、M&Aの成功要因やこだわってるものとかってなんかおありなんですか。
春日
我々はビジネスのデューデリジェンスを通じて自分たちで成長戦略を描けるものじゃないとM&Aはしないというふうに決めてます。
例えばデューデリジェンスでよく事業計画を出していただくことがあり、ありがたいんですけど、それを我々が作れない場合は、結局買った後にその計画を作っていくこともできなければ、実行していくこともできるイメージがない状態なんで、それもらってるだけだとどうしようもないなと思ってるんですよね。なので、そういった意味でも、まずどうやって自分たちがその事業の成長戦略を描けるかっていうことをすごく重視してやってます。
小澤
過去に数々再現性持ってM&Aされてきてると思うんですけど、中には失敗したものとかもあったりするんですか。
春日
失敗もあるとは思いますが、その失敗を何とか引き分けぐらいで終わらせるっていうことも大事なんじゃないかなと思っています。なので、過去にはすごくいい事業会社さんを優先度の観点で売却するという判断をしたこともあります。
これはM&Aをすると、心情的には「その意思決定が正しかった」というふうにどうしてもしたくなるんですよね。なので売却するという判断がなかなかしずらい。ただ、我々としては成長戦略を確実に実行していくっていうことが最優先なので、優先事項を第一に事業を売却するということも聖域なくやっていくというのはチームで決めてます。

Chapter 03

体制とリスクテイク ― マイノリティ出資という信頼のつくり方

小澤
再現性持ってM&Aやっていくために社内の体制やチーム、かなり強くなってるんじゃないかなっていうふうに思うのですが、今はどんな体制でM&Aに取り組まれてるんですか。
春日
私の直下で専門性のあるメンバーたちを採用してM&Aのチームを組成しています。
そして、部署としてノウハウをしっかりためていくことによって、どんどんとM&Aがうまくなっていくようにしていきたいなっていうふうにやっていますね。
小澤
ポート株式会社さんって一見今の事業の競合に思えるような、HR系の同業の会社さんとかにも、マイノリティー出資から入って資本業務提携していく事例があるじゃないですか。思い切った戦略だなって、私は個人的に思ってたりもしてるんですけど。
春日
そうですね。9%、20%、そして過半数以上っていう。
9%では何もできないんですけれども、ただ、それがなかったらきょうこのタイミングで過半数以上でグループインっていう形にはなってなかったと思うんですよね。なので、信頼関係をつくるために一定のリスクをこっちが取る。それで単なる純投資になったとしても、それはしょうがない。M&Aって失敗も付き物だと思うので、そういうリスクは一定程度取ってやってかないといけないなとは思ってますね。
小澤
出資していくタイミングで先方の売り主さんの経営者の人たちと、具体的にマイルストーンとかをお互いに描いて出資していくみたいなケースが多いんですか。それとも純粋に伴走しながら、信頼関係を勝ち取っていく中で比率を上げていくみたいなケースが多いんですか。
春日
おっしゃるとおりで基本的には後者ですね。
9%ならって言ってるということは、マイルストーンを決めて20%とか過半数というのは、やっぱり決めれない売り主の方ですよね。もしかしたらそのままで終わるかもしれないよっていう前提でスタートしてるケースが多いです。なので、そこはリスクテイクをして、その代わり一生懸命頑張らせてもらい、結果的に先方にとっても比率が上がってくといいなと思っていただけたら、それはわれわれの努力の結果だと思うので、そういうことをわれわれが頑張るっていうことでしょうね。

Chapter 04

「M&A=新規事業」という発想 ― 会社の形を変えるチャレンジ

小澤
これは100億になるだろうというのと、既存のポートとの親和性みたいなものを両方考慮し、新領域、新事業を考えていくのってめちゃくちゃ難しいんじゃないかなっていうふうに思うんですけど、ここって普段、春日さんの頭の中ではどんなこと考えながら新領域についてアンテナ張ってるんですか。
春日
われわれも「社会的負債を、次世代の可能性に。」っていうパーパスがあるので、そういうことを考えると、まず一定の社会的負債を抱えているマーケットである必要があります。そこを前提に探していくので、そこでまずセグメントは一定数は切れちゃうんですよね。その上で、エネルギーへの参入に当たってはM&Aを通じて、まさに新領域への参入を果たした。で、結果的に今売り上げでは一番そこが引っ張っているっていう状態なので、ある種M&Aを通じて形を変えてきた会社だと思ってるんですよ。
我々としては、M&Aで業績の足し算をするのはもう絶対やめようというふうに思ってるので、M&Aっていうものを通じて会社の形を変えていく。会社の形を変えていけるようなチャレンジングなM&Aに挑戦していくっていうことをしないとM&Aの意味がないと思っています。
小澤
春日さんの会社の人材領域でロールアップもやりながら、積極的に新規の領域に対する投資の意思決定もしてらっしゃるじゃないですか。
その際に、社内ではどんな規律を持って、この領域だったらリスク取って投資していこうみたいな意思決定のプロセスが行われてるんですか。
春日
例えばエネルギーの領域に参入した時はまさに弊社も人材の領域がメインで、当社と同じ業績の会社をM&Aしたんですよ。
それでシンプルに2倍になるっていうM&Aだったんですけれども。そこはそこで結構チャレンジングなM&Aだったわけですけれども、自分たちの会社を変えられるだけのポテンシャルがあるっていうことが判断材料になりました。結局そういうところでチャレンジすると、当然ですけどいろんな会社買うよりも勝負の一件を買ったほうが、そこに対して集中してやっていくので。われわれとしては社運を懸けたM&Aだったプロジェクトが、結果的に形が変わり、そこの事業が一番業績うを出しているので、そういった意味ではそれなりにそこに、自分たちで経営として集中した結果を一定程度は出してきたのかなと思いますね。
小澤
日本の企業の中にはなかなかM&Aであったりですとか、そもそも投資をすることに対してネガティブだったり、消極的な会社が多いなっていうふうに思います。
今まで数々のM&Aをやってきた春日さんから、今まだM&Aできてない会社さんに対してアドバイスというか、知見みたいなものがあれば教えてほしいです。
春日
今は会社の形を変えていくチャレンジングなM&Aと、既存の事業を圧倒的な状況にしていくためのM&A、この二つをやりますということで打ち立ててやっているんですけれども、そうは言ってもこれまでさまざまな失敗とかいろんな経験をさせてもらって、総じてやってみないといろんなものが分かんないんだと感じました。

そういった意味では会社がつぶれない前提の範囲内でのM&Aをまず実行するっていうのは必要なんじゃないかなと思います。
あとは、今インフレしてるんで、BSに現金ため込んでるよりは、株を買ったほうがいい。株を買うっていうことは要はM&Aなので、そういった形で積極的に投資を許容していく。
それをやっていく中で、投資の許容度っていうものがどんどん上がっていくと思うんですよね。

Chapter 05

「1足す1」を2で終わらせない ― 日本社会とグループ経営

小澤
私たちは外部の力を社内に取り込んでいく、インオーガニックグロースがもっと日本に広まっていけばいいなっていうふうに思うんですけど、出資やM&Aも含めて外部の力を社内に取り込んでいくっていうインオーガニックな成長を続けられる企業を日本に出していくには、今後どんなことが広まっていけばいいと思いますか。
春日
まずはインオーガニックM&Aを通じて外部の経営陣を結果グループに迎え入れられるわけじゃないですか。それによって結果的にシナジーが利いていって成功事例がたくさん出て、M&Aを会社を成長させていくと、時間も買えて、なおかついい人材も入ってきて、既存事業とのシナジーも利くということで、総じていいよねっていうこの空気感がつくられてくることが重要だと思うんですよね。

M&Aするっていうこと自体で言えば、シンプルに株の交換ではあるので、そこで働く社員やそこで働くメンバーたちにとってはあんまり変わらないことなんですけれども。それだけで終わったら単純に1足す1が2なったって感じになってしまうので、そこが掛け算になってその数字が上がると、結果日本社会にとっても良くなる、そういう好循環を我々としてもつくっていきたいなって思ってますね。
小澤
ポートのグループに入った会社さんって、創業者の方がしそのまま雇われ社長として続投されてるケースがすごく多いなっていうふうに思ってまして。いわゆるPMIとかをしていく過程ですとか、M&Aした後にポートグループとして、グループに迎え入れた会社に対して特別に気を使ってることとかってあったりするんですか。
春日
前提としてわれわれとしては伸びてる会社、つまりいい会社をM&Aしてるので、その会社には勝ちパターンが存在してる状態なので、そこにわれわれが上から入っていってがたがたやって、結果的にそのいいことが壊れてしまったら、結局買いたかったものが買えてないじゃないですか。

なので、まず取り組み方としては、われわれが上から経営陣を入れるとか、そういうことは一切やりません。どちらかというとオーナーさん、もしくはナンバー2でやってた方というのを社長に据えるということを原則にしてやってます。とはいえシナジーを利かせるという意味ではポートグループの中にやる気があって将来経営幹部になれるようなポテンシャルのある人材をどんどん現場から送る。ある種現場で一番使いやすい人材になれというふうに私たちはそのメンバーたちに言ってるんですけど、それでそこから役員にまで駆け上がってもらうということをやってくと、やっぱり信頼が積み重なってくんですよね。

そうすると結果的に、上から入ってきたなとか、あんまり自分たちの会社のことを知らないままやってきたなとか、そういうネガティブな感情を持たずに受け入れられる。現場でちゃんと活躍したから上に上げるっていう当たり前のことをやっていくっていうところからしても、真面目に、誠実にやってくれるよねっていうイメージは一定がつきます。だから良好な関係が築けて、結果的に継続的に一緒にやっていける、そんな感じなのかなと思ってますね。

Chapter 06

「足し算型M&A」の危うさ ― 上場基準の厳格化の中で

小澤
去年の9月に東証のグロースに対する維持基準が厳しくなったじゃないですか。
上場を目指してる会社さんがオーガニックな成長だけだとうまく基準に到達できないので、上場前からインオーガニックな成長するためにM&Aを検討される会社が増えてきたりですとか、あとは上場した瞬間にインオーガニックな成長もしてくださいっていうのを市場から求められて、M&Aを急いで検討してるっていうような会社さんが結構足元増えてきてるなっていうふうに思うんですけど。そういった会社さんに対して春日さんからなんかアドバイスみたいなものいただけませんかね。
春日
基本的にやることは全然、やってみるっていうこと自体はいいことだと思います。
スケジュールを引くとか、業績に織り込むとか、そういったものは、M&Aっていうものを主軸にして積み重ねで業績を大きくするんだっていうことが成長戦略の一丁目一番地だということであれば、もしかしたらいいのかもしれないんですけれども。

原則、売り主さんの意向あってのM&Aなので、パイプラインをどれだけたくさん作ったとしても、狙ったタイミングで目的のM&Aができるかは分からないです。だけれども今期、1件2件とちゃんとこなしていく、そういう戦い方なんだと思うんですよね。なので、スケジューリングをしたようなM&Aっていうのはなかなかうまくいってるケースを僕は見たことがないですし、危険だなと思ってますね。
ただ、そうは言っても、じゃあどこまで行ってもまずやってみないと始まらないっていうことでいうと、まず死なない範囲内でやってみるっていうのは大事ですよね。
小澤
M&Aはあくまで手段でしかないっていうふうに思います。
かつ、相手もあってのことなので、パイプラインを豊富にそろえて、タイミングが来た時に一緒になれるかというところが重要っていうところですかね。
春日
そうですね。
M&Aで、例えばですけど売り上げ10億の会社をM&Aしたとして、自分たちの会社が、今はですけど、今は3割成長させようと言ってるってことは、その10億で買った会社が来期3億伸びないといけないですし、逆に言うとその3億伸びないんだったら既存の事業でそこをリカバリーしなくちゃいけなくなる。なので、翌年とか翌々期とかになってくると、今度は買ったことが邪魔になるんですよね。そういうことを考えても足し算するっていうようなM&Aっていうのは、結果自分たちを苦しめることになってしまうんじゃないかなと思うんですよね。
しかも結局買った案件が伸びない場合って、常に規模の大きいM&Aしか狙わないと会社が伸びないっていうことになっちゃうので。そうするとどんどん難しい案件に手を出していくっていうことになるので、比較的チャレンジングっていう意味でいうと、企業規模の大きいM&Aにチャレンジしていくことは私はすごくいいことだと思ってるんですけれども、どうしても足し算型でやって、結果的にそうならざるを得ないみたいなことになってしまうのは、それはちょっと合理的じゃないのかなと思ったりはしますね。
小澤
今日は貴重なお話、ありがとうございました。