ベンチャーキャピタリストやスタートアップの投資や買収に関わる人達の中で、シード期のスタートアップ企業において、なにを重要視しているかという質問をすると、10人中9人は「起業家」と答えるでしょう。
それくらい創業初期のスタートアップ企業においては、起業家が重要です。それでは、良い起業家、つまり、会社を成長させていくことができる起業家とは、どのような特徴があるのかを考察していきます。
目次
数字に強く、ベンチマークがハッキリしている
良い起業家は、ビジョン・ミッションなどの定性的な目標以外に、自社が取り組む業界や、類似しているベンチマークとなる企業への理解力が高く、投資家が質問をした際に、事実を基にした数字を活用して、定量面に回答をしてくることが多いです。客観的事実を基にした数字と比較した際に、自社ではどのような点が優れているのか、抽象的な概念や表現を多用するよりも数字を多用している起業家の方が多い。
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数字に強い
数字を使って、競合他社やベンチマーク企業と比較して、自社がどの立ち位置なのか、事業が軌道に乗った際に、どの程度のマーケットシェアを獲得できるのか、自社のバーンレートやランウェイなどの財務状態など、数字を使ってコミュニケーションが取ることが上手い起業家は投資家が投資判断をする際の可否を検討しやすくなるため、実績が少ないシード期においては、起業家が数字に強いということは非常に大切です。
- ベンチマークが正確
自社の実績は少なかったり、PMF前段階においては、競合優位となる企業やベンチマークとなる企業について、どの程度まで調べているかが重要になってきます。特に革新性の高い技術やビジネスモデルを生業とするスタートアップ企業においては、自社と比較して情報量の乏しい投資家に自社をいかに良く理解してもらえるかが重要です。その際に、既存で先行してい競合他社や、ベンチマーク企業を例に出した比較や説明をすることで、自社への理解が進み、取引や投資を受けられる確率が上がるからです。
実行力と適応力が高い
シード期のスタートアップには、様々な困難や予期せぬ課題が次々に現れます。会社を設立する際にイメージをしていた事業で、そのまま大きく成長していくスタートアップは稀で、たいていはPIVOT(事業の転換)を繰り返しながら、事業内容を軌道修正していくことで、会社を成長させていきます。良い起業家は、こうした課題に柔軟に対応し、迅速に実行できる能力が大切です。
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スピード感を持って行動
シード期ではスピードが命であり、アイディアをすぐに形にして検証を重ねる能力が求められます。素早く行動し、成果を確認し、次の手を打つサイクルを回せることが重要です。失敗をすることで、改善を繰り返していくことで成長をしていきます。
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柔軟に軌道修正ができる
当初の計画通りに事業が立ち上がらない場合でも、自身のプライドやアイディアに固執することなく、現場で柔軟に軌道修正を繰り返し、時にはPIVOTをしながら、最終的に目指すべきミッションやビジョンに向けて進み続けることができる。
営業力が高い、営業組織に重きを置いている
良い起業家は、営業力が高かったり、営業組織に重きを置いていることが多い。よくあるスタートアップの失敗例として多いのは、起業家がテックサイド偏重で、ビジネスサイドに関心がなく、自社のサービスや技術をどのようにして販売していくか、どのようにして売上を伸ばしていくかに関心がないケースが挙げられます。一方で、伸びているスタートアップの起業家は、自身に営業的なケイパビリティがなくとも、営業に対する意識が高いことが共通しています。
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高い営業力
投資家に営業をして資金調達をする行為も、顧客に営業をして売上を立てる行為も、お金が入金されるという点が共通しています。資金調達にしろ、売上にしろ営業力が高くなければ、実績の少ないシード期のスタートアップに投資や取引をしてくれる会社は少ないです。0から1を生み出す一番苦しい時期を起業家の営業力で乗り切れるスタートアップは伸びていきます。
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営業組織への意識
起業家自身に営業力などが備わっていないケースでも、営業に対する意識が強く、早い段階から営業組織を作っているケースなどもあります。資金調達したお金をマーケティングに投下して、反応があった顧客にのみ営業を行う「反響型(SDR)」だけではなく、新規開拓を行うことができる「アウトバウンド型(BDR)」の組織を持つスタートアップは伸びていきます。
SDRとBDRについては、こちらを参照してください。
マネタイズの具体的なイメージができている
シード期のスタートアップは、不確定要素が多い中で、PIVOTを繰り返しながらも成長をしていくことが多いことは上述しましたが、ごく一部の領域を除いては、スタートアップは自社で売上を立てて、自社単独で成長をしていくことが求められます。その際に、起業家が自社はいつどのようなタイミングで、どのようにしてマネタイズをしていくかの具体的なイメージが出来ていなければ、その会社がマネタイズする日はこないかもしれません。
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マネタイズのイメージを付ける
シード期で、プロダクトがPMFをする前に、いつどのようにマネタイズするか具体的に説明してくれと言われても困るという起業家がいますが、自社の取り組む課題が世の中に対して、必要でありニーズがあるという想いの基で起業をしている起業家が、自社のビジネスがいつマネタイズ出来るかのイメージが出来ていなければ、そのスタートアップに投資を検討する会社は少ないです。起業家は自社がいつマネタイズできるのかをイメージ出来ている必要があります。
忍耐力と粘り強さがある
シード期のスタートアップでは、資金不足や製品開発の遅れ、競争の激化といった多くの困難が待ち受けています。これに立ち向かい、諦めずに続ける粘り強さが、良い起業家には求められます。
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困難に対するタフさ
どんな困難があっても、ビジョンを実現するために諦めずに立ち向かう姿勢が求められます。
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失敗から学ぶ意識
失敗を恐れず、それを学びのチャンスと捉えることができる前向きな態度が重要です。
シード期スタートアップの「悪い起業家」とは
短期的な利益に執着し、ビジョンが不明確
悪い起業家は、目先の利益や投資家へのアピールばかりを重視し、本来のビジョンや目的意識が欠けています。このような姿勢では、会社が一時的に成長しても、長続きしない可能性が高まります。
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短期的な成功に固執
一時的な収益や評価にばかり目を向け、長期的な成長を見据えた意思決定ができません。
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ビジョンの欠如
目指すべきゴールが不明確であり、社員や投資家が何に向かって努力するべきかを示すことができません。
実行力が低く、計画倒れが多い
悪い起業家はアイディアや計画ばかりが先行し、実際にそれを形にすることができず計画倒れで終わることが多いです。不確定要素が多いスタートアップとはいえ、事業計画への数値やコミットメントに対する達成率などは当初計画よりも著しく乖離がある場合など、言っていたことと、実態が異なるケースが散見される場合は、投資家・取引先・社員からの信頼を失ってしまいます。
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約束を守れず、計画倒れの頻発
アイディアを思いついても、具体的な行動に移すことができないため、計画倒れが多くなります。いつ頃までに資金調達を完了させると宣言して、まったく資金調達が進まない。いつまでにプロダクトのベータ版をリリースすると言ってもリリースされない。
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優柔不断
意思決定に時間がかかり、スピーディーに行動できないため、競争に負けてしまうことが多いです。
自己中心的で、顧客視点に欠ける
悪い起業家は、自分のアイディアに過剰に固執し、顧客のニーズや意見を軽視しがちです。この姿勢は、顧客満足度の低下や、プロダクトが市場で受け入れられない原因となります。
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自己中心的なプロダクト開発
顧客の声を無視して、自分の考えだけでプロダクトを開発するため、顧客からの支持が得られません。
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顧客との接点を持たない
市場調査や顧客インタビューを行わず、顧客視点が欠如しています。
リーダーシップの欠如とチームビルディング力不足
悪い起業家は、リーダーシップが弱く、チームをまとめる能力に欠けています。これにより、チームが一体となって努力できず、成長が阻害される可能性が高まります。
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メンバーのモチベーションを高められない
自らがビジョンを体現し、チームを鼓舞する力がないため、チームの士気が上がりません。
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コミュニケーション不足
チーム内でのコミュニケーションが不十分であり、意見の衝突や誤解が生じやすくなります。
持続力がなく、すぐに諦めてしまう
悪い起業家は、困難や逆境に直面するとすぐに諦めてしまう傾向があります。スタートアップの成長には忍耐力と粘り強さが不可欠であり、それが欠けていると事業の継続が難しくなります。
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困難に対する耐性が低い
初期段階で挫折や失敗に直面した時、容易に諦めてしまい、再チャレンジをしようとしません。
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失敗を責任転嫁する
失敗を自分の成長機会と捉えず、他人や環境のせいにする傾向があるため、自己成長が見込めません。
まとめ
シード期のスタートアップにおける起業家の資質は、事業の成長と存続に直接的な影響を与えます。良い起業家は、明確なビジョンと実行力、顧客志向、リーダーシップ、そして忍耐力を備えており、逆境にも柔軟に対応できます。一方で、悪い起業家は、短期的な利益や自己のアイディアに固執し、顧客視点やチームの結束を無視する傾向があり、困難に直面すると諦めがちです。
シード期では、このような起業家の特徴を見極め、事業の可能性だけでなく、起業家の人柄や資質も重視することが、投資判断において重要となります。